
[刹那]
「あいしてる」
の
言葉すら 待ってられない
指をはじく その ろくじゅういち分の刹那
「あいしてる」
の
言葉すら 長すぎる
たった一瞬
まばたきする その さんじゅうに分の刹那
心臓が鼓動する その百分の一の刹那
に
伝わる
二十四時間分の1の
その刹那
あなたといれたら
2003.4.23.
[遺灰]
駄目だ な、
と
思うのです。
一瞬一瞬 に、
刻み込まれた
その想いが
僕の手 を、
さらりと
すり抜けていくから
ああ、 僕は
音もなく崩れる骨になりたい
2003.8.20.
[ロストワード]
さっきまで、
手に入れていたはずの言葉が見つからない
おかしい な
だって、まだ僕が眠りの淵にいる時は
いろんな物が見えて
いろんな物を手にして
それをとても
不幸せに幸せに見つめていたというのに
所詮僕の言葉は借り物でしか
ありえないのか い?
いいや!
だからこうして、足掻いているんじゃないか
目覚めの淵で失った
あの言葉達に別れを告げて
僕の言葉を
僕の想いを
僕の
すべてを
けれども
僕の心の淵に微かに掠る喪失感の正体に
僕は気づいているのです
ああ、こんなにも
すべては失いがたいものだったのに ね
2003.10.12.
[クロス マイ フィンガー]
君は誰だい
鏡に向かって吠えた指
横浜で買った硝子の爪ヤスリ、
旅行先で折れたから
もう、ぼろぼろ
手入れのできない爪を持て余して
硝子に向かって吠える指先
2003.10.05.
[独白、もしくは十六歳高校生の戯れ言]
罪悪感すら感じない
かすれた言葉にかつて語った夢をのせ
烏のように啼く
燻った怠惰にいらだちを溢れさせながらも
怠惰に準ずる
自転車のペダルをこぎ
タイヤの空気入れなきゃと思う
笑いながら
捻れてしまうそうなはらわたで
おてだま。
夢ならとうに捨てました
雨の河原に置き去りにして
可愛がって下さいとダンボールに書いて
それが今更なんですか
置き捨てられた夢が可哀想とでも?
ならばあなたが拾って下されば良いでしょう
万事解決世界平和家庭円満景気回復
謝る言葉なんてもう
水に流してしまいましたよ
凝り固まった執着心も
ぽんぽんと手の内で踊る言葉の残滓
呆れた夢の残り火ですか
燻り続ける心が痛んでも
罪悪感なんて 感じない。
ええ、とうに
2003.11.11.
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