
[爪]
紙ヤスリで整えなくても
生きていくのに支障はないさ
日常を
整ったように見える それ
実はボロボロだと言いたいの ?
財布に溜まったレシート
磨けばきれいになるさ
安易に
僅か数ミリ 伸びた白さ
はじいて ぱちりと
噛んで傷ませて
悼んで ?
真夜中の枕が濡れました
わたしの爪は伸びたままに
2004.03.20.
[エンゲージレイン]
ほんのわずか 一瞬に
落ちる雨さえ動きを止めて
僕らは
雨に濡れた吐息を交わした。
2004.03.31.
[ か ぜ ]
吹く
風が
風に流 さ れ て あ な た の 声 が
一瞬で
掴み取れずに
通り抜けていった
その風は
きっとあなたの声だった
のがしたの
もう二度と
戻らない
風に流された私の涙は
追いつけず
ただ
地面にしみこむだけ
2004.06.20.
[オン ザ ロード]
歩いてきた道と
すり減った靴底に
愛を 。
一歩 、
戻らないように
戻れないように
踏み出した
それが始まり
出会うものは美しいばかりではない
だから美しい
朝日に追いついたら
終わるだろうか
今はまだ
道の途中で
目指す先は果てしなく
目的も
故郷も
この道のどこかに置き忘れて
それでも足は前に進むから
旅人の戯れ言とお笑いください
そして
途方もない この路の上で
すれ違えた一夜に
愛を 。
2004.08.04.
[saudade]
いつか誰かが
この路の果てで泣いていたのかも知れない
或いはそれは
僕だったか
君だったのか
隠した幻想は
なくしたコインとともに
今も
古い街角の
いつも決まって
そこでアイスを落としていたね 。
それはそうと、
お元気ですかと書き出した手紙は
いつまでも続きが書かれぬまま
2004.8.15
前頁 戻る 次頁