
[机上の神]
操る手を
待っていた
僕を殺して
僕を救って
涙を愛を悲鳴を
生きるために
終わらすために
この手からこぼれ落ちる
たくさんの感情たち
感傷たち
すべて
この心臓から
操る手を
待っていた
けれどそれは
神ではなく
この、
2005.6.22.
[いと]
言葉なく
わだかまった感情の皮膜を
打ち破ることができず
この内側で
やわらかく肥大して
はち切れることもできず
僕は狂おしいまでに欲していた
何かを
あるいは何も無いことを
言葉なく
悲しみも怒りも苦しみも
愛情も憎悪も狂気も
乱反射する世界に押し込められて
この喉を通り抜ける熱波は喉を殺し
叫びは血となり爛れ落ちるだけで
もどかしく絡みつく
感情の
ほどけない旋律
言葉なく
2005.6.24
[紅茶賛歌]
アールグレイは訳知り顔
いつも密かに笑ってる
逃げ出しもせず駆け出しもせず
一人で笑ったニヒリスト
ダージリンは眼を閉じた
平凡な日常
安穏の行く道
外れずいつも真ん中で
セイロンは気取ってみせる
しゃなりと決めた斜めの角度
決して鈍くはなりませぬ
気に障ると書いてナルシズム
色白彼女に恋したアッサム
とうとう溶けて濁り出す
レディーグレイ、頬染めて
着飾る香りは花のかんばせ
甘く軽やか踊る水面
沈んで苦く溶けた舌
白く甘く化粧は適度に
そうして迎えて
あなたの口元
2005.6.26.
[埋葬]
夢は秘やかに息を引き取り
黒い葬列が
満月の空を横切る
不確かな感傷は緩い風に掻き乱され
僕の涙は地の底まで沈んだ
面影は蜃気楼の彼方
絡みつく熱砂を吸い込み
血のような紅い華を咲かせて
夢はしめやかに息を引き取る
君の手の感触は
夢幻とともに露と消え
朝靄は全ての輪郭を映し
黒い葬列が満月の空を横切る
花が散り
すべての願いが消え去り
君は陽炎の向こう
やがて世界には
灰色の戦場だけが残される
2005.8.2.
[Save your tears]
君の涙
僕は一人で
その
受け皿になろうとして
2005.8.2.
前頁 戻る 次頁